【御製をドイツ語に】昭和14年(1939年)刊行『Ausgewählte Gedichte von Kaiser Meidi』を読んでみた

日本とドイツ

明治神宮でおみくじを引いたことがありますか?

明治神宮のおみくじ「大御心」には、明治天皇の御製、昭憲皇太后の御歌が書かれています。

御製は天皇陛下が、御歌は皇后陛下がお詠みになる和歌のこと。

少し前に明治神宮でおみくじをひいたところ、裏には和歌の英訳も載っていました。

では、明治天皇の御製をドイツ語に翻訳しようという試みも、過去にあったのでしょうか。

調べてみてたどり着いたのが、下記の一冊です。

Ausgewählte Gedichte von Kaiser Meidi
(直訳:『明治天皇の選ばれた詩歌』/表紙記載の和題:『明治天皇御集』

昭和14年(1939年)に刊行された北昤吉の御製独訳集で、日独伊協会による刊行と記されています。

 

さっそく序文を読んでみました。北はこう書いています。

Fast ganz unbekannt aber ist Meidi im Westen als Dichter, wo er doch in Japan bereits zu den Klassikern gezählt wird.

(歌人としての明治天皇は西洋ではほとんど知られていない。日本ではすでに古典的な歌人の一人に数えられているにもかかわらずである)

これはあくまで北自身の見方です。さらに序文全体を読むと、「歌人・明治天皇」をドイツ語で紹介しようとする意図も読み取れます。

そして序文を読み進めると、思いのほか、いろいろな人物の名前が出てきました。

整理してみます。

  • 北昤吉
    御製を選び、「何年も前」にエールケと約200首をドイツ語に翻訳したと記しています。
  • ヴァルデマール・エールケ
    文学史研究者。北によれば、二人による訳は東京の雑誌『Gakuen』に日本語原文とともに掲載されました。
  • ヴィルヘルム・ゾルフ
    1920年代の駐日ドイツ大使。北は、ゾルフが明治天皇の御製がドイツでも知られることを望んでいたと記しています。
  • ヘルマン・ホイヴェルス
    後に上智大学第2代学長を務めたイエズス会士。北は、自分の訳文に目を通してもらうよう依頼したと記しています。

 

多い。

四人が同じ立場で翻訳に参加したわけではありませんが、一冊の序文からこれだけの名前が出てくるとは思いませんでした。

 

さて、せっかくなので、本に収録されている御製を一首見てみます(表記は同書に準拠)。

ひさかたの空はへだてもなかりけり
つちなる國はさかひあれども

空には隔てがない。しかし地上の国々には境がある、という意味になるでしょうか。

ドイツ語訳を覗いてみると、こんな表現が使われています。

  • „An dem weiten Firmamente“(広大な天空に)
  • „auf Erden“(地上に)
  • „die Grenze“(境界)

日本語では「空」と「地」、そして「境」。

ドイツ語でも、それぞれに対応する言葉が見つかりました。

  

明治天皇の御製をドイツ語で読んでみたい。そんなところからたどり着いた今回の一冊。

序文を読んでみると、このドイツ語訳は、北昤吉一人の名前だけで完結する話ではなかったことが見えてきました。

北はエールケとの翻訳について記し、ゾルフの希望を紹介し、ホイヴェルスには訳文の確認を依頼したと書いています。

そして本には、実際にドイツ語になった明治天皇の御製が収められています。

すべて読み切るのはなかなか大変そうですが、気になるものがあれば、このブログでも少しずつ取り上げてみたいと思います。

  

出典・参考資料

  • 『Ausgewählte Gedichte von Kaiser Meidi / Hrsg. von Reikichi Kita』,Nichi-doku-i-kyokai,1939.
  • 明治神宮ホームページ「明治天皇の御聖徳」
  • 明治神宮ホームページ「おみくじ・お守り」

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