先日、実家から荷物が届きました。
箱を開けると、一冊の辞書が入っていました。
大学時代に使っていた『アポロン独和辞典』です。
ドイツ語を学び直すのにあたり、実家の兄に頼んで送ってもらいました。
大学ではドイツ哲学を専攻し、授業や翻訳演習で毎日のように開いていた辞書です。
卒業後は実家の本棚で眠っていましたが、約二十年ぶりに再会することになりました。

奥付を見ると、私の持っているのは1998年第5版。
学生時代には気にも留めませんでしたが、今こうして手にすると、長い年月を経てもなお現役で活躍してくれそうな頼もしさを感じます。
最近の私はドイツ語を調べるとき、ドイツ語のオンライン辞書『Duden』を開くことが増えました。
「Dudenならスマホで見られるし」……ええ、私は文明の利器に完全に依存していました。ドイツ語の説明も、スマホのAIアプリで訳してもらえますしね。
それはそれとして、ドイツ語をドイツ語で説明する記述を読むのは楽しく、「ドイツではこんなふうに説明するのか」と、新しい発見がたくさんあるのも事実です。
一方、久しぶりにアポロン独和辞典を開いてみると、日本語ならではの丁寧な解説や語法の説明に思わず見入ってしまいました。
さらに驚いたのは巻末の付録です。

ドイツの政治機構や建築様式、音楽用語などが掲載されていて、「えっ、そんなことまで載せてたの?」と、思わず辞書に話しかけたくなりました。
学生時代は単語を引くことに精一杯で、そこまで目が届いていなかったのでしょう。
最近は、「実は巻末もすごいんです」と静かなアピールを受けているような気がしています。
Dudenとアポロン。それぞれに違った魅力があります。
二十年前の自分が使っていた紙の辞書と、今の自分が親しんでいるオンラインのDuden。
これからは、この二冊を行き来しながら、ドイツ語だけでなく、その背景にある文化や歴史にも寄り道していけたらと思っています。
ちなみに、「アポロン」はドイツ語では Apollon、あるいは Apollo と表記されます。
気になってDudenでも引いてみましたが、説明は驚くほど簡潔で、意味は「Apollo」の一語だけでした。
一方、アポロン独和辞典では、「ギリシア神話のアポロン(光・音楽・詩・予言などをつかさどる太陽神)」や「美青年」と説明されています。
単語だけでなく、その言葉が生まれた文化まで教えてくれる。そんなところも、独和辞典の魅力なのかもしれません。
参考資料
- Duden Online
- 根本道也ほか編集・執筆『アポロン独和辞典』第5版、同学社、1998年2月
