【日独比較?】お父さん、僕は2番になったよ!ハンスは釣りへ、祖父は草取りへ【車輪の下】

日本とドイツ

最近、ヘルマン・ヘッセ『車輪の下(Unterm Rad)』のドイツ語原文を、Project Gutenbergというサイトでゆっくり読んでいます。

『車輪の下』は、才能のある少年ハンスが、周囲から勉強や成功を求められるなかで、しだいに追い詰められていく物語です。

※以下、『車輪の下』序盤の内容に少し触れます。

 

前回の記事では、神学校の難関入試に合格したハンスの、こんな言葉を取り上げました。

Ich bin der Zweite geworden.
(僕は2番になったんだ)

ハンスは試験に合格し、しかも成績は2番。

この記事を書いた後、ふと思い出しました。

そういえば、うちの祖父は「2番」で大変な目に遭っていたな、と。

 

まずはハンスの物語を整理します。

試験に合格したハンスが家に帰ると、父親がちょうど玄関に立っています。

ハンスが神学校に合格し、「2番になった」と報告すると、父親はびっくり。

何度も息子の肩を叩き、笑い、何か言おうとしても言葉が出てきません。

そして、ようやく、

Donnerwetter!

さらにもう一度、

Donnerwetter!

高橋健二訳では、「えらいこった!」と訳されています。

その後、ハンスは大好きな釣りをするため、父親にナイフを借りようとします。

すると父親は2マルクを渡して、こう言うのです。

du kannst dir ein eigenes Messer kaufen.
(自分のナイフを買ってこい)

ハンスは新品のナイフを手に入れ、釣り竿にする枝を切ります。

そして午後から夕方まで、頬を赤らめ、目を輝かせながら釣り道具の手入れに没頭しました。

実に幸福な少年の姿です。

 

一方、私の祖父。大正生まれで、ずいぶん前に亡くなりました。

祖父が書き残した文章には、幼いとき、初めて通信簿をもらった日のことが書かれています。

まだ通信簿の見方がよくわからなかった祖父。ただ「二」という字が読めたので、嬉しそうに家へ帰りました。

玄関には父親が立っています。

祖父は、通信簿に「二」と書いてあることを父親に知らせました。

父親は通信簿を取り上げます。

一瞥します。

次の瞬間、祖父は平手打ちで吹っ飛ばされました。

「二」は、クラスの中で2番という意味だったそうです。

祖父の父親、つまり私の曾祖父は、非常に気性の荒い人だったとか。

その後、祖父はボロ服に着替えさせられ、畑へ草取りに出されます。

そして、三日間草取りをやって、ようやく父親に許されたそうです。

……何を許されたの?何に怒ったのかすらわからない……。

ちなみに、ハンスの父親が言った Donnerwetter! は、「感心・称賛を伴った驚き」としての用法です。

一方、名詞の Donnerwetter には、「激しい叱責、大目玉」という意味もあるそうな。

私の祖父、別の意味のDonnerwetterを食らったのでは……。

 

改めて並べてみます。

ハンス、2番になる

→ 父、大喜び
→ 肩バンバン!
→ 2マルクで新品のナイフ
\釣りだーー!!/

祖父、2番になる

→ 父、一瞥
→ バチーン!
→ 着替えさせられる
草取り三日間

 

しかも二人とも、結果を報告したとき、玄関には父親がいました。

そして、結果発表後には屋外活動へ向かっています。

一方は趣味。もう一方は罰としての草取り。孫としては比較せずにはいられません。

 

そういえば前回の記事で、ハンスの友人ハイルナーのこんな言葉も取り上げました。

Was hast du davon, wenn du Erster oder Zweiter wirst?
(1番や2番になって、それで何になるんだ?)

この言葉が、なんだか妙に意味深く感じられます。

もちろん、神学校の難関入試での「2番」と、昭和初期の日本の小学校の通信簿を単純に比較することはできません。

それでも、「2番」を父親に報告する二人の少年の場面がどうにも似ていて、つい並べてしまいました。

少なくともこの二人については、「2番になって、それで何があるか」は、かなり違ったようです。

 

……祖父に「何をやってるんだ、お前」と思われそう。

そういえば以前も、祖父によく似たドイツ人ヴィオラ奏者を見つけて、わざわざ音楽配信サービスに加入した話を書いていました。

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ヘッセのドイツ語原文を読んでいただけなのに、今度は90年以上前の祖父の通信簿にたどり着きました。

また祖父をドイツ人と接続してしまった……おじいちゃん、どうか安らかに。

 

出典・参考資料

  • Project Gutenberg「Unterm Rad by Hermann Hesse」
  • 阿部知二 [ほか]編『河出世界文学大系』55 (ヘッセ 1),河出書房新社,1980.11.
  • Duden Online「Donnerwetter」
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