先日のブログで話題にした、田中芳樹のスペースオペラ『銀河英雄伝説』。
子どもの頃、この小説が大好きでした。
アニメ版も熱心に見ていて、キャラクターが登場するたび、画面に表示される名前のアルファベット表記に興奮していました。
特に印象に残っているのが、ドイツ語圏風の名前が多い銀河帝国軍です。
「フォンってなんだ? あ、なんか貴族を表すものっぽい! かっこいい!」
そんなことを思いながら、無邪気にWOWOWでアニメを観ていました。
もちろん、当時の私はドイツ語など知りません。
格変化も、名詞に性があることも、何も知りません。
ただし、
「ü」は、なんとなく「ュ」っぽい!
とは知っていました。
なぜなら、
Müsel(ミューゼル)
Grünewald(グリューネワルト)
Mückenberger(ミュッケンベルガー)
など、üがつく姓の人物が物語の序盤から登場するからです。
しかも上二つは、主人公ラインハルトとその姉アンネローゼの姓。そりゃ印象に残りますよね。
同盟側には、Schönkopf(シェーンコップ)もいました。
öを見れば、「これは『エー』っぽい音になるらしい」。
子どもの私は、そんなふうに文字と日本語表記を結びつけていたようです。
一方、äがつく名前はほとんど記憶がありません……いたのかなぁ?
では、そのままドイツ語に興味を持ったのかというと、持ちませんでした。
我が家はハリウッド映画が大好きで、私の興味は自然と英語圏へ向かいました。
そして大学へ。
哲学を学ぶことになった私は、ゼミの教授からドイツ語を教わります。
「哲学書を読むためのドイツ語だからね」
先生はHalloもGuten Morgenも飛ばして、いきなり十数ページ先へ進みました。
発音練習は最低限。それでも、ウムラウトの発音がそれまでの私の理解と大きく外れていなかったことに、安堵したのを覚えています。
そんな大学時代、確かフンボルトを扱った授業だったと思います。
先生が教室を見回して聞きました。
「ヴィルヘルム・フォン・フンボルト。はい、このフォンの意味、わかる?」
一同:シーーーン。
私:(わかる。でも、この沈黙を破る勇気がない……)
幼少期から蓄積された謎の知識が、大学の授業で日の目を見ることは、結局なく。
そして、さらに長い年月が経った現在。
私は今度こそ、会話も含めてドイツ語を学び直しています。
そこで改めて知りました。
ドイツ語のウムラウトの発音は、思っていたよりずっと難しい。
üは、「なんとなくュっぽい」で済むほど簡単な音ではありませんでした。
唇の形、舌の位置。日本語にはない発音です。
子どもの頃の理解は、まったく見当違いだったわけではありません。
ただ、ちょっと雑でした。
まさか「üはなんとなくュっぽい」という理解を、中年になった自分が「間違ってはいないけど、ちょっと雑だったね」と振り返ることになるなんて。
幼い頃の私は、きっと考えもしなかっただろうなぁ。
出典・参考資料
- 「ROMAN ALBUM 銀河英雄伝説 COMPLETE GUIDE」徳間書店、2009年