夏です。Es ist Sommerです。
湿度が高くなり、蚊が元気になる季節となりました。
このたび、足首を集中的に三か所、蚊に刺されました。
かゆいです。非常にかゆい。
かきむしりたい気持ちを抑えながら患部を冷やし、薬を塗ります。それでも、つらい。
そんなとき、ドイツ語の先生の言葉を思い出しました。
「感情と一緒に覚えると、定着しますよ」
なるほど。
これほど強烈な不快感とともにある今なら、確実に覚えられるかもしれません。
それでは、ドイツ語で「虫刺され」、蚊に刺されたことは何と言うのか。
Mückenstich
だそうです。
Mückeが「蚊」、Stichが「刺すこと」、「刺し傷」。
つまり、Mückenstichで「蚊の刺し傷」、「蚊に刺された跡」という意味になります。
私は三か所刺されたので、複数形の
drei Mückenstiche
です。
痛恨の出来事ではありますが、おかげで単数形と複数形を同時に覚えることができました。
危機は好機なのです(大げさ)。
さて、このMückeという響きを知ったとき、私の頭の中に、ある人物が現れました。
田中芳樹のスペースオペラ小説『銀河英雄伝説』に登場する、グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥です。
ミュッケンベルガーは銀河帝国側の軍人。『銀河英雄伝説』の銀河帝国には、ドイツ語圏を思わせる名前を持つ人物が数多く登場します。
……ミュッケン?
まさか。
念のため、アルファベット表記を確認してみると、
Gregor von Mückenberger
でした。
少なくとも、綴りだけを見ればMückenです。
あの老練で、威厳があり、いかにも銀河帝国軍宇宙艦隊司令長官然とした人物の名前の冒頭に、「蚊」がいる。
全体を見てみると、
Mücken+Berg+er
「蚊」+「山」+「人」……?
蚊山人?
待て待て待て。
さすがに、姓を私の浅いドイツ語知識だけで勝手に分解するのは危険です。
日本の姓だって、字面だけでは由来を説明できないことがあります。私自身、以前自分の姓を調べてみて、意外な由来を知った経験があります。
そこで今度は、Mückenbergerに関連する単語を調べてみました。
すると、現在のドイツ・ブランデンブルク州ラウハンマー西地区が、かつてMückenbergと呼ばれていたことがわかりました。
本当にMückenbergがあった……!
では、このMückenbergという地名と、Mückenbergerという姓に何らかの関係があるのか。
そこまでは調べませんでした。
ドツボにはまりそうな嫌な予感がしたのです。
いつかまた続きを調べるかもしれないし、調べないかもしれないし。
足首を三か所蚊に刺されて、ドイツ語で蚊に刺されることを調べていたのが、ほんの数時間前。
気がつけば私は、銀河帝国軍元帥を経由して、ブランデンブルクの地名を調べていました。
Mücke=蚊。
これは、もう忘れないと思います。
足首は依然としてかゆいです。
出典・参考資料
- Duden Online「Mückenstich」、「Mücke」、「Stich」
- 根本道也ほか編集・執筆『アポロン独和辞典』第5版、同学社、1998年2月
- Stadt Lauchhammer「Lauchhammer-West (ehemals Mückenberg)」