ドイツ語のことわざを見ていたら、こんな言葉を見つけました。
Was lange währt, wird endlich gut.
(長く続くものは、ついにはよくなる)
währen は「続く、持続する」という意味です。
余談ですが、手元の独和辞典によると、この währen は雅語で、以前このブログで取り上げた dauern と同義とのこと。
また、endlich は「ついに、ようやく」という意味です。
ことわざ全体では、「長くかかっても、最後にはよい結果になる」といった意味でしょうか。
ドイツ語辞典Dudenの解説を読んでいて、気になる表現を見つけました。
langem, beharrlichem Bemühen
(長く、粘り強い努力)
Dudenでは、長く粘り強く努力したあと、一般にはよい結果が生じるという経験を表すことわざとして説明されています。
また、待っている人をなだめるときや、皮肉として使われることもあるそうです。
「長く、粘り強い努力」……。
この表現を読んで私が思い出したのは、『古事記伝』を著した本居宣長です。
本居宣長記念館によると、宣長が『古事記』研究に本格的に取り組み始めたのは、宝暦14年(1764年)。『古事記伝』全44巻を書き終えたのは、寛政10年(1798年)でした。
研究着手から完成まで、実に35年。35年……!
長い年月をかけて一つの研究に取り組むなんて、想像するだけでも気が遠くなります。
さらに調べてみると、宣長自身が寛政10年に書いた『うひ山ふみ』に、こんな言葉がありました。
年月長く倦ずおこたらずして、はげみつとむるぞ肝要
学問では、長い年月、飽きたり怠ったりせず、励み努めることが大切だというのです。宣長本人もこんなことを書いていたんですね。
思いがけず二つの言葉が重なったことが、なんだか嬉しいです。
ちなみに、ドイツ語の学習に苦しむ私にとって励ましとなるような言葉も、その後続きます。ざっくり言うと、こんな感じの言葉です。
- 学び方がよくても、怠れば成果は得られない
- 才能によって成果には違いがある
- 才能が乏しくても、努力すればそれに応じた成果は得られる
- 学問を始めるのが遅い人や、時間のない人でも成果を上げることがある
……ちょっとここから本居先生とお呼びすることにします。
先日の記事にも書いたのですが、私にとって伊勢神宮は大切な場所です。訪れるにあたって、『古事記』の現代語訳も読みました。
『古事記伝』そのものを読んだわけではありませんが、今回調べたことで、『古事記』に長年取り組んだ本居先生への敬意が改めて強くなりました。
そういえば、先日公開した北斎の記事では、Man lernt nie aus.(人は学び終えることがない)ということわざを紹介しました。
この二つのことわざには、どこか通じるものがあるように感じます。ただ、若干イメージが違うのかな、とも。
- 葛飾北斎:Man lernt nie aus.
(人は学び終えることがない)
→ まだその先がある! 学びに終点はない!
- 本居宣長:Was lange währt, wird endlich gut.
(長くかかっても、最後にはよい結果になる)
→ 長い道を粘り強く!進み続ける努力!
同じように長い年月をかけて何かに取り組んだ人物でも、思い浮かぶドイツ語のことわざは違うものですね。
……と、ここまでそれっぽく語ってきましたが、あくまで一人のドイツ語学習者の私見であります。
葛飾北斎、本居宣長。私もこの二人のように長く一つのことを……軽々に宣言するのはやめておこう。
出典・参考資料
- Duden Online「Was lange währt, wird endlich gut」
- 根本道也ほか編集・執筆『アポロン独和辞典』第5版、同学社、1998年2月
- 本居宣長記念館ホームページ「平成26年度 春の企画展」、「平成29年度 秋の企画展」、「資料集」
