手元の独和辞典で verschieben という動詞を調べていたら、こんなことわざを見つけました。
Verschiebe nicht auf morgen, was du heute kannst besorgen!
(《ことわざ》きょうできることをあすに延ばすな)
日本語でも、先延ばしを戒める言い回しはありますよね。例えば、「明日やろうは馬鹿野郎」みたいな。
このドイツ語のことわざを見て、私がふと思い出した言葉があります。それは、以前勤めていた会社の上司の言葉でした。
当時、私の職場では水曜日がノー残業デー。夕方になると、上司が、
「みなさーん、今日はノー残業デーです」
と声をかけたうえで、よくこう言っていたのです。
「明日できることは明日に回しましょう」
今回知ったことわざと真逆ですよね。
気になったので、ドイツ語辞典Dudenで単語の意味を確認してみました。
- verschieben
物を別の位置へ「ずらす」という意味のほか、予定などを「より後の時点へ移す」という意味があります。 - besorgen
「手に入れる」、「買う」といった意味のほか、「済ませる」という意味もあります。今回のことわざでは後者の意味です。
つまり、「今日済ませられることを、明日へ延ばすな」と考えるとわかりやすそうです。
なるほど。やっぱり元上司と逆に見えます。
ということは、元上司が言っていた言葉を、私の独断で元のことわざをもじってドイツ語にしてみると……?
Verschiebe auf morgen, was du morgen kannst besorgen!
(明日済ませられることは、明日へ延ばせ!)
否定の nicht を取って、heute(今日)を morgen(明日)に変更してみました。これだけで、教訓がきれいに反対方向を向きました。
ただ、書いていて少し気になったことも。
元のことわざは「今日できること」を明日に延ばすな、と言っています。
一方、ノー残業デーに元上司が言っていたのは、「明日でもできる仕事なら、今日は切り上げましょう」という意味だったのかもしれません、多分。
その意味でいうと、私が作ったドイツ語は、そのニュアンスまで伝えられているのかなぁ。
そもそも、この作文はドイツ語話者にすんなり伝わるのか。
……などと考えていたらキリがないような気がするので、今日のうちに記事化を済ませておこうと思います。
ところで今回初めて知ったんですが、厚生労働省は時間外労働を減らす取り組みとして、「ノー残業デー」や「ノー残業ウィーク」の導入・拡充を挙げています。
そして、厚生労働省が紹介している企業の取り組みを見てみると、「毎週水曜日をノー残業デー」としている例がありました。
どうやら、水曜日のノー残業デーは私の勤め先だけではなかったようです。
「みなさーん、今日はノー残業デーです。明日できることは明日に回しましょう」
日本全国のどこかの職場で、水曜日の夕方、同じような声が聞こえてくるのかもしれません。
出典・参考資料
- 根本道也ほか編集・執筆『アポロン独和辞典』第5版、同学社、1998年2月
- Duden Online「verschieben」、「besorgen」
- 厚生労働省ホームページ「所定外労働削減要綱の改定について」、「1.所定外労働時間の削減」
