※この記事では、『銀河鉄道の夜』の物語終盤の内容に一部触れています。
先日の記事にも書いた通り、岩手旅行の予習をしています。
岩手といえば、やはり宮沢賢治と答える人も多いのではないでしょうか。
私も最近は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読み直しています。
そんな中で気になったのは、この作品にドイツ語訳はあるのか、ということ。
調べてみた結果、ありました。ドイツ語タイトルは下記の通りです。
Eine Nacht in der Milchstraßenbahn
日本語に訳すと、「天の川鉄道での一夜」といったところでしょうか。
2021年に刊行されたJürgen Stalphによるドイツ語訳です。
もう少しタイトルを詳しく見てみます。
- Milchstraße:Milch(乳)+ Straße(道) → 日本語では「天の川」
- Bahn:「鉄道」、「軌道」などの意味
日本語の『銀河鉄道の夜』とは、少し印象が違います。
特に気になったのが、Milch。「乳」です。
『銀河鉄道の夜』を読み返してみると、「乳」は意外なほど作品の中に登場しているんですよね。
冒頭の授業では、銀河が川にたとえられる一方で、「乳の流れ」としても説明されています。
そして地上では、ジョバンニは病気の母親のために牛乳を取りに出かけます。
しかし、最初に訪ねた牛乳屋では受け取ることができません。
その後、銀河鉄道の旅を経て現実へ戻ってから、ようやく牛乳を手にします。
ドイツ語版の翻訳者が、作品中の「乳」や「牛乳」を意識して Milchstraße という言葉を選んだかどうかまではわかりません。
ただ、タイトルで Milch が気になって本文へ戻ってみたら、そこにも「乳」があった。
こういう発見があるから、外国語のタイトルを調べるのは面白いです。
一方、日本語の『銀河鉄道の夜』という題を見ると、「銀河」からは星々がきらめくような感じを、「鉄道」からはどこか金属的な響きを私は感じます。
いまさらなんですけど、「銀」と「鉄」という二種類の金属がこのタイトルには含まれているんですよね。
だからなのか、独特の光沢感があるように思いますが、そうした印象はドイツ語タイトルでは薄くなったようにも感じます。
『銀河鉄道の夜』。うん、やっぱりいいタイトルだ!
同じ作品でも、別の言語のタイトルから眺めてみると、見えてくるものが少し変わるようです。
そんなことを面白がって調べていたところ、旅行先の花巻で、まさに翻訳をテーマにした企画展が始まったことを知りました。
宮沢賢治イーハトーブ館の「世界で読まれる賢治文学―翻訳からみる受容の拡がり―」です。
開催趣旨によれば……賢治文学の翻訳がどのように世界へ広がっていったのかをたどり、現在の翻訳状況を紹介するとともに、翻訳者から賢治文学との出会いや翻訳についての考え、現地読者の反応なども紹介する……とのこと。
なんというタイミング……!
ただ、公開されている開催趣旨を確認した範囲では、ドイツ語が展示でどのように扱われているのかまではわかりませんでした。
実際の展示ではドイツ語訳が紹介されているのか。紹介されているとすれば、どの作品なのか。 花巻で確かめてこようと思います。
出典・参考資料
- 青空文庫ホームページ「宮沢賢治 銀河鉄道の夜」
- Kenji Miyazawa, Eine Nacht in der Milchstraßenbahn, aus dem Japanischen von Jürgen Stalph, cass Verlag, 2021
- 宮沢賢治学会イーハトーブセンター「企画展「世界で読まれる賢治文学―翻訳からみる受容の拡がり」
