最近、何かと耳にする「空き家問題」。
私の実家もその例にもれず、空き家問題に直面しています。正確には、実家の近くに暮らす兄と姉が、です。
先日、その二人から実家の写真が送られてきました。
亡くなった父が遺した膨大な荷物が、すっかり整理されています。
これはすごい……!それを見た私は、
「お疲れ様でした」
とメッセージを送りました。
そして、ふと思いました。
「お疲れ様でした」って、ドイツ語で何というの?
兄も姉もドイツ語はわかりません。二人にドイツ語で伝えたかったわけではなく(伝えたら多分困惑される)、挨拶についての素朴な疑問です。
そこで手持ちの独和辞典を開き、「あいさつ(Grußworte)」のページを見てみました。
ありません、「お疲れ様です」がありません。
- Guten Morgen!(おはようございます)
- Guten Tag!(こんにちは)
- Guten Abend!(こんばんは)
考えてみれば、私は勤務先でこうした挨拶をあまり使わず、「お疲れ様です」で済ませていました。
労をねぎらうときだけではありません。職場ですれ違ったときにも、誰かに話しかけるときにも。
実際、「お疲れ様です」は、本来の労いだけでなく、職場でのすれ違いの挨拶や、用件を切り出す際の呼びかけなどにも使われることが研究で指摘されています。
ずいぶん働き者の挨拶だなぁ。
では、ドイツ語ではどうなのでしょう。
熊本市公式サイトに、ちょうど同じ疑問を扱った記事がありました。
当時ドイツ国際交流員を務めていたSeitz Annaさんは、「お疲れ様!」をドイツ語でどう言うのかという問いについて、
「そういう表現はドイツ語にありません」と言えば正解ですが
としたうえで、ドイツの職場で使われる挨拶を紹介しています。
もちろん、ドイツ語で労いや感謝を伝える表現がない、という意味ではありません。
で、その挨拶というのがこちら。
Schönen Feierabend!
(よい仕事後の時間を!)
日本語にするなら、「仕事の後の時間を楽しく過ごしてね!」といったところでしょうか。
仕事を終えて帰る同僚に使う挨拶です。
ここでドイツ語辞典Dudenを開いてみると、Feierabend には大きく二つの意味があります。
- 仕事を終えたあとの自由時間
- 一日の仕事の終了
さらに語源をたどると、もともとは「祝祭日の前夜」を意味した言葉なのだとか。
そこからどうやって現在の意味になったのか。ものすごく気になりますが、今回は先に進みます。
Seitzさんは Schönen Feierabend! について、仕事後の自由な時間を楽しんでほしいという願いを含む挨拶として紹介しています。
ここで、私が兄と姉に何を伝えたかったのか、改めて考えてみました。
まずは、「片づけ、大変だったね。お疲れ様」という労い。
でも同時に、「美味しいものを食べて、ゆっくり休んでね」とも思っていました。
そう考えてみると、Schönen Feierabend! の説明に、私があの「お疲れ様でした」に込めていた気持ちと少し似たものを感じます。
二つの挨拶が同じ意味だと言いたいのではありません。
そもそも実家の片づけは「仕事」なのかと聞かれると……うーーーん。
兄と姉に Schönen Feierabend! と言ってよかったのかは、結局わかりませんでした。
でも、これまで何気なく使ってきた「お疲れ様」。
そもそも私は、何を伝えるために使っていたんだろう。
ドイツ語の挨拶を探していたのに、最後に気になったのは日本語でした。
「お疲れ様」には、思っていたよりいろんな気持ちを込めていたのかもしれません。
出典・参考資料
- 根本道也ほか編集・執筆『アポロン独和辞典』第5版、同学社、1998年2月
- 倉持益子「「お疲れさま」系あいさつの意味の希薄化と拡大 : 職場での使い方を中心に」『明海日本語』(13),明海大学. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/10305372 (参照 2026-08-30)
- 熊本市公式サイト「国際交流員のページ」Seitz Anna「ドイツ語の挨拶を知っていますか?」Vol.01
- Duden Online「Feierabend」
