ドイツ語講座で Märchen という単語を習いました。
メルヘン。
日本語でも「メルヘンな世界」、「メルヘンチックな雰囲気」などと使います。
でも、ドイツ語の Märchen って、そもそも何なのでしょう。
ついでに言うと、-chen って縮小辞では?Mär が小さくなった?だとしたら、Mär ってなに?
いつものようにドイツ語辞典Dudenを引いてみると、Märchen は中高ドイツ語 mære の縮小形とのこと。
さらに、現代ドイツ語にも Mär / Märe という語が残っていました。
Dudenによると、格調高い表現で、しばしば皮肉・冗談めかして使われる語とされ、「物語、奇妙な話、信じがたい、または事実ではない話」といった意味が示されています。
なるほど。
Märchenの -chen は、語源的にも本当に縮小辞だったんですね。
では、Märchenとはどんな物語なのでしょう。
Dudenの説明を要約すると、
- 民衆の間で伝承され、
- 超自然的な力や存在が人間の生活に関わり、
- 多くの場合、最後には善い者が報われ、悪い者が罰せられる物語
といったところでしょうか。
少なくともこの説明からは、日本語の「メルヘン」から私が連想する、かわいらしく幻想的な雰囲気とは少し印象が違います。
これを聞いて思い出したのが、昔話の桃太郎。
桃から生まれ、犬・猿・雉を仲間にして、鬼ヶ島へ行って鬼と戦う。
これは私がDudenの説明にぱっと当てはめてみただけですが、意外ときれいに収まるように見えます。
では、ドイツのMärchenで桃太郎っぽいものは?
幼い頃から知っていたグリム童話の『ブレーメンの音楽隊』を思い出しました。
実は、幼い頃の学芸会で雄鶏役をやったことがあるのです(今思えば、女子なのにオスの役を任されていたんですね、ショック)。
桃太郎には、犬・猿・雉。
ブレーメンには、ロバ・犬・猫・雄鶏。
動物の仲間が集まり、力を合わせて悪者に立ち向かう。
少なくとも、ここだけ見るとちょっと似ているような。
そこで実際に読み直してみました。
『ブレーメンの音楽隊』はグリム兄弟の『Kinder- und Hausmärchen』に1819年の第2版から収録されています。今回読んだのは1857年第7版の本文です。
冒頭、ロバはこう宣言します。
ich gehe nach Bremen und werde dort Stadtmusikant
(ブレーメンへ行って、そこで町の音楽家になる)
その後、犬、猫、雄鶏が加わり、四匹はブレーメンを目指します。
ところが、一日ではたどり着けません。
途中で見つけた泥棒たちの家で、四匹は積み重なって一斉に鳴き、泥棒を追い払います。
戻ってきた泥棒も撃退。最後には、その家がすっかり気に入り、もう出ていこうとは思わなくなります。
ブレーメン、着いてないんかい。
桃太郎は鬼と戦うために旅立ち、鬼ヶ島に着く。
こちらは音楽家になるためブレーメンを目指したのに、途中の家に落ち着いてしまう。
そして、ブレーメンには着かない。
でも、みんなで一斉に鳴いて泥棒を追い出したのだから、音楽隊っちゃ音楽隊なのかな。
……言うほど似てなかったなぁ。
幼い頃の記憶なんて、そんなもんです。それとも、学芸会の脚色が過ぎたのか。
どちらにしろ、音楽隊はブレーメンには行かなかった。その結末を知れたのは、少しおもしろかったです。
出典・参考資料
- Duden Online「Märchen」、「Mär」
- Wikisource DE「Brüder Grimm: Kinder- und Hausmärchen, Erster Band, Große Ausgabe, 7. Auflage, Göttingen: Dieterichsche Buchhandlung, 1857, Nr. 27 „Die Bremer Stadtmusikanten“」
- Bremen.de「Das Märchen der Bremer Stadtmusikanten」
