【音楽と映画】カラヤンの映像を見てヴィスコンティを思い出す?二人の接点を調べてみた

雑記

1960年代後半から1970年代前半の、カラヤン指揮ベルリン・フィルの映像を観ていると、ときどきルキノ・ヴィスコンティの映画を思い出します。

うまく説明できないのですが、突然カメラが客席を映して、そこに『山猫』のバート・ランカスターが座っていても、あまり違和感がなさそうな感じです(どんな感じだ)。

ヴィスコンティにはドイツの歴史を描いた作品もあるし、カラヤンはベルリン・フィルを長く率いた。

最初は、同じ時代のヨーロッパを映すと、なんとなく似た空気になるのかな、くらいに考えていました。

また、二人とも貴族に連なる家系の出身です。それが関係しているのかはわかりませんが、二人ともたたずまいが堂々としていて、どこか威厳があるように見えるんですよね。

個人的には、そこも似ているなぁと思っていました。

 

そこで二人の接点を調べてみると、出てきたのはミラノ・スカラ座でした。二人とも、1950年代のスカラ座でオペラ制作に深く関わっていたのです。

まず、スカラ座をめぐる共通点として、下記が挙げられます。

  • 1954年、カラヤンはスカラ座でマリア・カラス主演《ランメルモールのルチア》を指揮し、自ら演出も担当。
  • 同年、ヴィスコンティも同じスカラ座で、カラス主演《ヴェスタの巫女》を演出。

そして、実現しなかった直接の共同作業もあったとされます。

  • 1956年、カラヤンがヴィスコンティに、ザルツブルク音楽祭でモーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》の演出を依頼したとされる。

『ヴィスコンティ・フィルムアルバム』によれば、カラヤンから依頼された《コジ・ファン・トゥッテ》の演出について、ヴィスコンティはリラ・デ・ノビリと舞台装置や衣裳について打ち合わせを始めたものの、計画は実現しなかったといいます。

 

さらに、周辺の人物にも接点がありました。

  • マリア・カラス

1954年、同じスカラ座で、カラヤンの《ランメルモールのルチア》とヴィスコンティの《ヴェスタの巫女》の両方に主演。二人のスカラ座での活動を見ていくと、まず名前が重なる人物。

  • フランコ・ゼフィレッリ

1968年の映画『ロミオとジュリエット』を手掛けた映画監督。
若い頃にヴィスコンティの映画や舞台の現場で経験を積み、その後カラヤンと《ラ・ボエーム》などを制作。

  • フランコ・マンニーノ

作曲家。その回想によれば、ヴィスコンティはカラヤン指揮の《道化師》を聴いたあと、レオンカヴァッロへの評価を変えたという。これがいつ、どの演奏だったのかは未確認。
(出典:ジャンニ・ロンドリーノ『ヴィスコンティ : 評伝=ルキノ・ヴィスコンティの生涯と劇的想像力』)

  • アルトゥーロ・トスカニーニ

指揮者。ヴィスコンティは幼い頃からトスカニーニ家と近しい環境にあり、一方、若きカラヤンもトスカニーニの演奏に強い感銘を受けた。

 

では、なぜ私はカラヤンの映像をヴィスコンティっぽいと感じたのか。

いろいろと接点があることはわかったのですが、「これだ!」という理由には今回たどりつけませんでした。

ただ、私が別々の世界だと思っていた映画、オペラ、クラシック音楽が、思っていた以上に人や劇場を通じてつながっていたことがわかったのは、なんかちょっと嬉しい発見でした。

母と祖母がヨーロッパ映画を好きだったこともあり、私は子どもの頃から、そうした映画を観る機会が比較的多くありました。

だからゼフィレッリの名前まで出てきたとき、

「あー!『ロミオとジュリエット』の人!」

と、昔観ていた映画と、いま観ているカラヤンが急につながったような感覚になりました。

これまで自分の中では、ヨーロッパの芸術文化を断片的に見ていたのかもしれません。

でも、その断片の間には、ちゃんと人や劇場を通じた道があった。

当時のヨーロッパの芸術ネットワーク、また少しずつ調べてみようと思います。

 

出典・参考資料

  • ジャンニ・ロンドリーノ 著 ほか『ヴィスコンティ : 評伝=ルキノ・ヴィスコンティの生涯と劇的想像力』,新書館,1983.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12437801 (参照 2026-09-26)
  • カテリーナ・ダミーコ・デ・カルヴァロ 編『ヴィスコンティ・フィルムアルバム』,新書館,1981.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12437793 (参照 2026-09-26)
  • 諸石幸生 著『トスカニーニ : その生涯と芸術』,音楽之友社,1989.7. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/13232745 (参照 2026-09-26)
  • Museo Teatrale alla Scala「Fantasmagoria Callas」、「Zeffirelli, the years at La Scala – Biography.」
  • Repositorio GREDOS USAL「La música en el cine de Luchino Visconti: análisis de la banda sonora y estudio de la música y sus funciones」
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