外務省のホームページで、ドイツ語についての記事を読んでいました。
そこで見つけたのが、Jeinという言葉です。
ドイツ語の「はい(Ja)」と「いいえ(Nein)」を組み合わせた言葉です。
外務省のホームページでは、「はい」でも「いいえ」でもあるとき、あるいは「はい」でも「いいえ」でもないときに使える「便利なフレーズ」として紹介されています。
なんとも気になる言葉です。
「行くのかい? 行かないのかい?」
「Jein」
こんなふうに使えるのでしょうか。
そこで思い出したのが、以前のドイツ語講座です。
接続法を習っていたとき、日本語の「行けたら行く」をドイツ語ではどう表現するのか、と先生に聞いたことがありました。
少なくとも私の感覚では、「たぶん行かない」という意味で使われることもある表現です。
すると先生から、こんなお言葉が。
「あんまり、そういう相手に忖度を求めるような言い方はしない方がいいんじゃないの?」
文法以前の問題でした。
違うんです、先生。私が使っているわけではないんです。私はよく言われる側なんです。
さて、ではJeinはどうなのでしょう。なんだかこの曖昧さ、「行けたら行く」に近いものを感じたのです。
手元の独和辞典にはなかったので、ドイツ語辞典Dudenを引いてみました。
- jein(副詞):jaとneinを縮めた言葉。話し手がJaと言う決心をつけられず、迷っていることを表す
- Jein(名詞):JaとNeinの間に位置する返答
名詞の方のJeinには、こんなおもしろい用例も。
mit [einem klaren] Jein
( [明確な] Jeinで)
明確なのか、曖昧なのか。どっちなんだろう。
さらに調べると、Jeinを扱ったJörg Bücker氏の2013年の論文が見つかりました。
論文の要旨によると、話し言葉のjeinは、直前の発話を受けて現れる応答です。多くの場合は質問ですが、必ずしも質問とは限りません。
そして、「Jein」と答えて終わりではなく、そのあとも何らかのやり取りが続くことが示されると分析されています。
つまり、
「行くのかい?」
「Jein」
以上。
……とは、どうもいかないようです。
私が確認できたのは、論文の要旨までです。
また、この論文は日本語の「行けたら行く」を研究したものでも、先生の「忖度」という指摘を裏付けるものでもありません。
ただ、少なくとも私が最初に想像したような、曖昧な返事だけして、そのまま会話から退場できる魔法の言葉とは少し違うようです。
「ドイツ語にも便利な言葉があるじゃん!」
と思ったのは、ほんの数分間でした。
先生のおっしゃった「忖度」という言葉を、また思い出しています。
出典・参考資料
- 外務省ホームページ「(キッズ外務省)世界のあいさつ」
- Duden Online「jein」、「Jein」
- De Gruyter Brill「Jörg Bücker (2013)Jein: Formen und Funktionen einer Dialogpartikel in Mündlichkeit und Schriftlichkeit」